面会交流ニュース

親権者指定ーその変遷と面会交流

藤崎十斗:アメリカでは、テンダーイヤーズドクトリンといって母子優先の原則がありましたよね。だから、クレイマークレイマーでもお母さんがあきらめてくれたから良かったけど判決は父親の敗訴だったわけでしょう。

服部弁護士:アメリカでは、正面から母子優先の原則を取り上げることは、平等保護条項違反という裁判例が各州で確立されて、1980年代には「子の最善の利益」の基準が採用されるようになりました。まさにクレイマークレイマーの時代だよね。だから本当は父親が親権をとれても法的にはおかしくなかったのだけど、男性が子育てをしながら会社員をするというのはアメリカですら一般的でなかったということを示すことになりますね。

藤崎十斗:日本では、いまだ母子優先の原則ですよね。だから、クレイマークレイマーから全く進歩がない。

服部弁護士:日本でも2003年に、母が幼児を置いて実家に帰ったので共同親権者であった父が監護し、父の監護態勢やこどもの生育状況には特段の問題がないケースがありました。しかし、決定は母子優先の原則で母親を監護者としましたので厳しい批判が巻き起こりました。

藤崎十斗:でもさ、汗臭いかもしれないけど、僕はパパや叔父さんに面倒みてもらってさ、別に「母性的監護」というやつを受けていないけど、うーん、しいて言えばナニイが女性という程度かな。だからさ、母性が必要というのも、何かバイアスがあるよね。この前の岡崎での審判でも、「母の愛情、優しさ、細やかさ、博愛」という寺本桂子裁判官の酔っ払った説示がありましたけど、まるで男性には「愛情、優しさ、細やかさ、博愛」がないとでもいいだげですね。

服部弁護士:寺本桂子氏はアラウンドフィフティーだから、まさにクレイマークレイマー世代で、女が育てるのが当たり前よ、という激しい思い込みがあるのでしょうね。裁判での批判の経過も知らず家事裁判官としては失格だと思います。

藤崎十斗:アメリカの主たる養育者と面会交流パッケージをまねして、日本でも主たる監護者基準というのが出てきたよね。

服部弁護士:要素がアメリカの例に従って、おむつの交換、沐浴、風呂、寝かしつけ、深夜の泣きだし対応、衣服の交換、予防接種、医師に連れていくのは誰かなどの要素なんですよね。

藤崎十斗:だけど主たる養育者と面会交流のパッケージは大きな間違いがある。そもそも、こうしたものは父母間でシェアされているし共働きの場合、有意な差がないケースもめずらしくないです。また、アメリカやフランスでは原則は共同親権です。なので、重要なのは、親権の帰趨ではなく、こどもがどのように離婚する父母により養育されるかという養育計画であり、そして養育費、監護計画というパッケージを提示するのが原則なんです。ですから主たる監護者基準と前提となっているウェストバージニア州最高裁が示したガイドラインもありますが、いまやウェストバージニア州自体が原則共同親権になっているんです。だいたい主たる監護者基準は、母親がやっている家事をピックアップして、男性親がやるキャッチボールとか、キャンプへの同行とか、そうした人間性の発達に対する要素が欠落しているようにも思うね。ちなみに保育園の送りはお父さんでも、キャッチアップは母親というケースが多いですし。

服部弁護士:日本でも、共同親権か、単独親権かを裁判で争うような仕組みにして、原則共同親権には監護計画を立てる、単独親権の場合は面会交流を保障し、いずれも養育費に対するペナルティを高めるというのが、正しい方向性かもしれないね。

藤崎十斗:カナダでは、東京高裁決定によれば、原則イーブンの量的監護が原則で、単独親権の場合は100日程度の面会交流が認められるんだよね。どうして、日本は年間12回、つまり、年間の3パーセントしか、こどもと一緒に過ごせないんだろうね。

服部弁護士:それは歴史的「洗脳」があります。日本では、欧米と異なり過去の父母で子育てをする習慣がなく、再婚家庭等で子育てをするという習慣の方がしっくりきていたわけです。ママレードボーイのように再婚してかっこいい男の子と一つ屋根の下みたいなストーリーからも日本の社会通念がうかがわれるのです。そして、それを1973年に家裁のお抱え学者であったジョセフ・ゴールドシュタインによって、面会交流に否定的な考え方が家庭裁判所調査官に定着したんだ。

藤崎十斗:ゴールドシュタインは、虐待などを持ち出して面会交流には何かと否定的だよね。監護者ではない親に法的に強制できる面接交渉権を与えらるべきではない、と家裁の研修会で語ったことが忠実に厳守されているわけです。フレンドリーペアレンツ判決などは、ゴールドシュタインの考え方が現在の日本に合っていないというあがらいなのでしょうね。調査官では金科玉条のように面会交流に否定的な「子の福祉を超えて」などをせっせと読んでいるようです。

服部弁護士:多くの国で共同親権と単独親権が選べるようになっていることが大事で、ラディカルに共同親権を主張するばかりではないこと、面会交流も充実させることが必要ですね。はっきりいって刑務所に家族が面会に行くことより、面会交流の回数は少なく、これでは、どうなのか、という想いを抱く人もいるでしょう。

藤崎十斗:あとさあ、面会交流について、有意義であるというコンセンサスがあるよね。フランスなんか、共同親権が原則だから、普段はママのところにいても、パパと会うことについての有意義性は完全に認められていて支援機関も多いよね。日本で面会交流の頻度が低いのは、行政や民間に面会交流あっせん機関が少ないからという側面があって、どうして国の援助が得られないのかも不思議だね。だって学校教育は無償なんてしょ、そして親から学ぶのが元来の姿なんだから、学習権の一環として学校のような面会交流施設があってもいいよね。エフピックのようなマンションを借りた怪しげな施設じゃなくて、幼稚園や小学校でできないのかな、って思ってしまいます。