親権停止審判申立事件を本案事件とする審判前の保全処分申立事件におい て、重篤な心臓疾患を抱えるなどし、直ちに治療及び手術を受ける必要があ る未成年者の親権者らについて、同人らのこれまでの対応や現在の生活状況 等に照らし、現在の緊急事態に迅速かつ適切な対応ができるかどうか疑問が あるとして、本案審判認容の蓋然性及び保全の必要性を認め、同人らの未成 年者に対する職務の執行を停止した事例 東京家審平成28年6月29日
【事案の概要】
生後4か月である未成年者は、先天性の心臓疾患のため出生後から入院し、
根治手術が必要とされていた。親権者らは、未成年者を見舞う回数も少なく、
おむつや洋服の補充を求めても直ちに対応しないことがあり、約束された医師
との面談をキャンセルすることがあった。児童相談所長は、未成年者の心不全
が進行し、直ちに手術が必要とされる状況になったことから、未成年者を一時
保護し、親権者らについて親権停止の審判を求めるとともに、同審判が効力を
生じるまでの間、親権者らの未成年者に対する職務の停止を求める審判前の保
全処分を申し立てた。 【審判の要旨】 裁判所は、未成年者の病状や今後予定される手術の内容等に照らすと、未成
年者の親権者としては、未成年者を頻繁に見舞うとともに、医療従事者と十分
に意思疎通を図り、緊急の事態が生じた場合も含めて、未成年者が必要として
いる医療行為が実施されるよう、迅速かつ適切に対応する必要があるところ、
親権者らのこれまでの対応や現在の生活状況等に照らすと、親権者らが迅速か
つ適切に対応できるかどうか疑問があるとして、本案審判認容の蓋然性及び保
全の必要性があると判断し、申立人の申立てを認容した