親権者である父から暴行等を受け、自立支援ホームで生活している高校3 年生の未成年者について、就職先の会社からパスポートの取得を求められて いるなど、就職の諸手続を進めるために親権者の同意が必要であるが、親権 者が協力を拒んでいるなどとして、親権停止審判申立事件の審判の効力が生 ずるまでの間、親権者の職務の執行を停止し、その停止期間中の職務代行者 を選任した事例 広島家庭裁判所平成28年11月21日
親権者である父親が激しい暴力を振るった上、その後は合理的な理由もなく
未成年者との一切の関わりを拒否して就職に必要な手続への協力等も拒んでい
ることに照らすと、本案審判認容の蓋然性があり、パスポートの取得等に当た
っては親権者の同意が必要で、会社から指定された取得期限が迫っていること
や,その他の就職に関する手続きも翌年4月までの約4か月以内に行う必要が
あることに鑑みると、保全の必要性もあると判断して、申立を認容した事例。
* 親権停止(審判前の保全処分を含む)についてこれまで判例雑誌等に掲
載された事案は、医療ネグレクト及びそれに準じる事案が多いところ、本
件はそれ以外の事由で審判前の保全処分(親権者の職務の停止及び職務代
行者の選任)を認容した事案である。